学校リスクマネジメント推進機構の鈴木彰典です。
私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。
このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。
さて、学校(園)では、様々なトラブルが発生いたしますが、保護者とのトラブルを未然に防止するためには、保護者が何を期待しているのかを把握することが大切になりますが、今号では、コミュニケーションを強化するために役に立つ内容についてお伝えしたいと思います。
当機構には、毎日、様々なご相談の連絡が入りますが、約半分が保護者対応の相談です。
そこで、保護者の立場で考えてみたいと思います。
保護者からのクレームはどのような時に起きるでしょうか。
それは、学校に「期待を裏切られ、納得できない対応」をされた時です。
逆に言えば「保護者の期待を裏切らず、納得のいく対応」をすればクレームは起こらないことになります。
日頃から、保護者とのコミュニケーションを密にして、保護者の期待やニーズを把握することが大切になります。
ネット社会の今、クラスの連絡網はなく、学校からの連絡はメールが主になっている学校が増えてきていると思います。
顔を合わせたり、電話で声を聴きながらのコミュニケーションが少なくなったことと、クレームが増えていることとは無関係とは思えません。
だからこそ、コミュニケーションを意識的に強化しなければなりません。
◆コミュニケーションの質を高める
コミュニケーションの質には、①技術と②人間性という二つの要素があります。
①技術とは、人当たりのよい表現方法などのノウハウです。
同じことを言っても、人から好感を持たれる人と持たれない人がいます。
好感を持たれるかどうかは、言葉遣いによっても変わることがあります。
例えば、使わない方が良い言葉として、「だけど」「でも」「しかし」などがあります。
これらは、相手の言葉を否定することになります。
「先ほども言いましたが」「先日も言いましたが」という言葉も使わない方が良いと思います。
これらの言葉の裏には「何度同じことを言わせるのだ」というニュアンスが含まれ、相手の怒りを増長させてしまうからです。
代わりに「そして~も・・・」「そのうえで~も・・・」などの言葉は、相手の言葉を否定しないため、かなり印象がやわらぎます。
×お母さまの考えは〇〇だったんですね。
でも、学校としては・・・と考えています。
〇お母さまの考えは〇〇だったんですね。
そして、学校としても・・・と考えています。
言葉遣いで保護者の受け止め方はかなり変わると思いますが、言葉の技術だけ磨いても中味が伴わないと「あの先生、口だけね」と逆に不快感を持たれてしまいます。
そこで大切なのは人間性なのですが、一朝一夕に人間性を磨くことは難しいため、中長期に向上を図ることが大切かと思います。
メラビアンの法則をご存じでしょうか。
人は相手からのメッセージの表現方法に矛盾がある状況では、55%を顔の表情やジェスチャー、服装等の見た目から判断し、38%は声のトーンや口調などで判断します。
そして、言葉の意味や内容などの言語情報は僅か7%しか相手に影響を与えないと言われています。
謝罪をする場合に、いくら言葉で「すみません」と言っても、態度が横柄だったり、笑っていたりしたら、相手は全く謝られているとは感じません。
逆に、謝罪の言葉ではなく、例えば「このたびは・・・」としか言っていなくても、抑揚をつけて深々と頭を下げて見せられると、謝罪の気持ちが伝わります。
要するに、謝罪をする時には視覚的にも聴覚的にも言語的にもそれに見合った表現方法で行う必要があるということです。
◆コミュニケーションの量を増やす
コミュニケーションの量を増やすとは、相手との接点と時間を増やすことです。
校内で保護者とすれ違う時には、挨拶をするだけではなく子どもの良い所や頑張っている所を褒める、保護者会やおやじの会などを開催して積極的に意見を集める、学校評価などで保護者の意見を集めるなど、工夫をしながら行うことが必要です。
しかし、仲良くなり過ぎてもいけません。
適度な距離感を保ちながら「話を聴いてくれて、子どものことを褒めてくれた先生だから、頭ごなしには文句は言いたくない」という心理状態をつくると良いと思います。
なお、接点と時間では、接点を増やした方が良いと言われています(両方効果はあります)。
今後、保護者とのコミュニケーションの強化を図ることを検討する際の参考にしていただければと思います。
※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典