創刊100号を迎えて/ 鈴木彰典

創刊100号を迎えて/ 鈴木彰典

学校リスクマネジメント通信(ニュースレター)が今号で創刊100号となりました。
これまで学校リスクマネジメントの観点から様々な情報発信をさせていただきましたが、当機構に関わりのある皆様のご支援によりまして、節目を迎えることができました。
誠にありがとうございます。

 本号では、代表の宮下がこれまでの取組を振り返り、今後、力を入れて取り組んでいきたいことについて、インタビュー形式でお伝えしたいと思います。

 

◆これまでの取組を振り返っての感想は?

 

 あっという間というのが正直な感想です。
当機構はこの10月で創業19年目を迎えましたが、社会情勢や学校の事情が昔とかなり変わって来ています。

 

 先日、この学校リスクマネジメント通信を毎号ファイルに綴っている学校の話を何度か聞きましたが、そのような報に接すると嬉しくなりますね。
これからも学校のリスクマネジメントに少しでも役立つような情報発信ができればと思っております。

 

 

◆コロナ前とコロナ後でクレームの質が変わってきていると思うか?

 

 クレームの質は大きく変わってきていると思います。
メンタルが疲弊し、身体や気持ちが病んでいるような保護者や教職員が増えています。

 

子どもたちも同様に変化していますので、保護者も教職員もついていかれないようなケースが多いと思います。
これには様々な要因があると思いますが、変化を一言でいいますと「余裕の無さ」だと思います。

 

対応については、昔のように性善説前提の誠実な対応だけでは難しく、

一線を超えたケースには毅然と厳しく対峙していかなければ教職員を守れなくなってきている現実があります。

 

◆学校危機管理で絶対に押さえておかなければならないことは?

 

 逆算思考が必要だと思います。

 

危機が顕在化した時には様々なダメージが発生しますが、

まずはこのダメージはどのようなもので、今後どのように派生していくのかを想定することです。

 

その上で、逆算してこれらのダメージを最小化するためには、

何をどのような順番や方法で実行していけばよいのか、

また、どのようなメッセージを誰に出せば良いのか、

そして、学校や教職員はどのように振る舞えば良いのかを決めていきます。

 

しかし、ダメージを想定するためには、

これらの危機管理のノウハウの他に情報リテラシーを高めておくことも必要不可欠です。

 

これが低いと想定に漏れや間違いが生じてしまうため、極めて重要なスキルです。

 

 情報リテラシーとは、情報の真偽や信頼性を見極めて活用する力のことを言うのですが、

まずはX(旧Twitter)などのSNSや規制の少ない検索エンジンを用いて

多様な情報にアクセスできる力(ネットリテラシー)があることがダメージ想定の前提になってきます。

 

その上で、情報の真偽を見極める力が必要になってくるのです。

 

たとえ、インターネットを駆使して様々な情報にアクセスができたとしても、

その情報の真偽を見極められないと誤情報に容易に誘導され、ダメージの想定を間違えてしまいます。

 

情報の真偽を見極める方法については、紙面の都合上、飛躍した説明になってしまうのですが、

国際金融の枠組みと、近代史、占領史の知識が必要になってきます。

 

これらの知識がないと、広く深いダメージの想定は到底できません。

この説明にピンとこない方は、これらの分野の知識を深めて頂くと良いと思います。

 

◆あらためて学校現場の先生方にお伝えしたいことは?

 

 今の日本を含め、学校を取り巻く環境は大袈裟ではなく危機的な状況にあると思います。
前述しましたが、自分を守るために、そして、子どもたちを守るために情報リテラシーを高めて頂きたいと思います。

 

それが、結果的に学校のためにもなっていくからです。

 

 大切なことは、これまでの知識や業界の枠組み、世の中の常識を超えた情報に触れた時に、

それを頭から否定するのではなく、一旦立ち止まって解釈を止めて、少しずつ学んでみることです。

 

 また、クレーム対応力を高めることも非常に大切だと思います。

 

正しい頑張り方をしないとメンタルが病んでしまいますので、

クレームが続く場合は、身体を動かすスポーツ等の動的な休憩と

リラックスできる静かな音楽を聴くなどの静的な休憩の両方を意識的に日常に取り入れると、

良い結果に結びつきやすくなると思います。

 

片方だけの休憩だと効果が限定的になってしまいます。

 

◆今後、力を入れていきたいことはどのようなことか?

 

 動画配信サイトを活用した研修業務の拡充です。

 

現在、準備中なのですが、これまでのノウハウを動画に取り込んで先生方に視聴していただきたいと思っています。

 

必要な時に必要な情報を得られることは危機管理的に必要であると思っています。
全国の学校に様々な知識や対応方法を習得する機会をご提供できればと考えております。

 

 

◆今後、当機構が果たす役割はどのようなことだと思うか?

 

 我々が今取り組んでいることは、他が出来ないことだと思っております。

 

弁護士は学校で発生した問題を「法律」で解決するためのアドバイスをしてくれますが、

我々は限られた専門領域からのアドバイスではなく、問題の解決に必要な専門分野を見立て、これらを組み合わせてアドバイスをすることができるからです。

 

もちろん、各分野に長けている弁護士の先生とも提携しています。

学校だけで、法律分野、警察分野、マスコミ、保護者対応、生徒指導、

情報管理等の複雑に絡み合った問題の解決に必要な複数の専門分野を見立てることは非常に困難です。

 

これには幅広い高度な専門知識と経験が必要になってくるからです。

我々は、毎日のように学校から複数の相談を受けていて、解決策のアドバイスを続けておりますので、

これまで蓄積した効果的な解決策をご提供できれば良いと思っております。

 

 今や学校だけで問題解決を図ることは難しくなっています。
我々をどんどん活用し、解決までの時間や労力を短くして頂ければと思っております。

 

精神的な負担も軽くなると思います。

 

 時に、涙を流しながら相談をしてくる先生方がいらっしゃいます。
「頼りになるのは宮下先生しかいないんです」との言葉が胸を打ちます。

 

 我々の原点はここにあります。

 

 これからも学校や教職員の方々のお力になり、支えていきたいと思っております。
まだまだ至らない部分もございますが、これからも前進していきたいと思います。

 

この「学校リスクマネジメント通信」も200号を目指して継続していきたいと思っております。

 

 
 

※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典

 

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