学校リスクマネジメント推進機構の鈴木彰典です。私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。
さて、猛暑の中で始まった2学期でしたが、真冬のような寒さが訪れる季節になりました。
各学校(園)では様々なことに取り組み、大きな成果を収めたことと思います。
まもなく2学期が終わりますが、冬休みはクリスマスやお正月など、児童生徒等にとって楽しいことが続きます。
しかし、危険が潜んでいることも見据えておく必要があります。
今号では、児童生徒等が事故や事件に巻き込まれることが無いことを願って、危機管理の観点から情報提供させていただきたいと思います。
◆検挙・補導人員における少年の割合(都内)
警視庁の公式ホームページによりますと、令和5年6月末における都内の刑法犯罪少年の検挙・補導人員は1,592人(14.2%)で、昨年同期と比較すると161人(11.3%)増加しました。
また、街頭犯罪における少年の検挙・補導人員は219人(36.4%)で、昨年同期と比較すると33人(17.7%)増加しました。
特に街頭犯罪のうち、少年の検挙・補導人員の占める割合が高いのは、オートバイ盗(84.8%)、部品ねらい(50.0%)でした。
*刑法犯罪は、刑法に規定する罪のことで、殺人・強盗・恐喝・窃盗・詐欺・性犯罪などです。
*街頭犯罪は、街頭で発生する犯罪のうち、路上強盗・ひったくり・自動車盗・オートバイ盗・自転車盗・車上ねらい・部品ねらい・自動販売機ねらいなどです。
*少年は20歳に満たない者(男女)です。
◆少年犯罪の状況(都内)
刑法犯罪少年の検挙・補導人員は、平成22年以降、減少傾向で推移していましたが、令和4年から増加傾向に転じました。
また、令和5年6月末の時点では、ひったくり等の街頭犯罪についても増加傾向にあります。
オレオレ詐欺等の特殊詐欺については、令和5年6月末の時点で検挙・補導された少年は49人で、昨年同期と比較して26人(13.7%)減少していますが、闇バイトへの少年の関与が大きな社会問題となっています。
◆最近の主な検挙事例(都内)
令和5年6月末現在の主な検挙事例(少年事件)として、以下のようなものがあります。
〔特殊詐欺関連〕
〇息子の先輩を装って現金190万円が入った紙袋をだまし取った詐欺事件〔凶悪犯〕
〇カッターナイフを使用するなどして脅迫し、現金を奪った強盗事件
〇高級腕時計店に侵入して脅迫するなどし、腕時計などを奪った強盗・邸宅侵入事件〔粗暴犯〕
〇異性との交際を巡るトラブルで知人を殴るなどした傷害事件
〇通行中の男性に対して因縁をつけて殴る蹴るなどした傷害事件〔その他〕
〇営利目的で大麻を所持した大麻取締法違反事件
〇暴力を加えて、海へ飛び込ませた強要事件
◆被害に遭う少年たち(全国)
令和5年6月末現在の都内の少年犯罪の状況を前述しましたが、これらの事案は、少年犯罪の一部に過ぎません。
これ以外にもたくさんあります。
一方、これとは反対に被害側になる少年も多くいます。
今はインターネット利用に関わる犯罪が多く、警察庁のデータを基に全国の状況をご紹介したいと思います。
令和4年の児童ポルノ事犯の検挙件数は3,035件、検挙人員は2,053人、被害児童数は1,487人で、いずれも昨年よりも増加しました。
令和4年におけるSNSに起因する事犯の被害児童数は1,732人であり、前年から減少したもののおおむね横ばい状態にあり、依然として高い水準で推移しています。
なお、被害児童のうち、中学生と高校生で全体の89.5%を占めています。
また、小学生は114人ですが、昨年と比較して31名(37.3%)増加しています。
令和4年におけるSNSに起因する事犯の被害児童と被疑者が知り合うきっかけとなった最初の投稿者の割合は、被害児童からの投稿が74.9%を占めますので、児童がきっかけとなることが多い状況です。
被害児童の投稿内容の内訳は、「プロフィールのみ」や「趣味・嗜好」「友達募集」「日常生活」「オンラインゲーム友達募集」で53.7%となっております。
◆SNSに起因する事犯の検挙事例(全国)
①被疑者は、SNSを利用して被害児童(13歳)に裸の画像を送るよう脅迫し、被害児童に裸の画像を撮影させた上、SNSを介してその画像を送信させた。
被疑者を強要、児童ポルノ製造で検挙した。
②被疑者は、わいせつ行為をする目的で、SNSを利用して被害児童(12歳)他1名を誘拐し、自宅においてわいせつ行為を行った。
被疑者をわいせつ誘拐罪、青少年健全育成条例違反で検挙した。
③被疑者は、SNSを通じて知り合った被害児童(16歳)に対償を供与する約束をして、いかがわしい行為を行った。
被疑者を児童買春で検挙した。
今ご紹介した事例はほんの一部ですが、SNSを通じて男女関係なく、多くの児童が重大な被害に遭っています。
SNS等を介し、面識のない人と直接会うことに対する警戒感が低いことが被害増加の要因の一つと考えられています。
(警察庁「インターネット利用に係る子供の犯罪被害等の防止について」参照)
◆冬休みを迎えるにあたって
各学校(園)では、冬休み前に「冬休みの過ごし方」の指導を行うと思いますが、発達段階や学校(園)の実態に応じて指導内容・指導方法は異なると思います。
しかし、児童生徒等を取り巻く環境は、大人が想像しているよりもはるかに危険が潜んでおり、安易にSNSを利用して加害者になったり、被害者にならないよう、危険を回避する力を身につけることが必要です。
今年1年間を振り返りますと、若者世代の薬物乱用事件や闇バイト事件などが大きく報道されました。
本人たちは、あまり罪の意識がなく、事件に関与してしまった可能性もありますが、事件に関わらないためにはどのようにしたら良いのかを考えさせることが大切です。
そして、児童生徒等の事件(加害と被害)の状況を学校(園)の実態に応じて保護者にお伝えして、保護者の理解と協力を得ることが不可欠です。
最近では大麻グミや画像生成AI(人工知能)なども話題になりました。
新たな事件への対応が今後の課題となりそうです。
今後も、当機構では新しい情報提供に努めてまいりますので、参考にしていただければと思います。
※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典