学校リスクマネジメント推進機構の鈴木彰典です。新年早々、衝撃的なことが立て続けに起こりましたが、誰が予想していたでしょうか。
今思うと、地震にしても航空機事故にしても、いつ起きてもおかしくない出来事です。
このことは、危機はいつ、どこで、誰に、どのように起きても不思議ではないということを表しています。
今号では、危機による損失の可能性をできるだけ少なくするためには、日頃から、どのようなことを想定しておかなければならないのかをお伝えしたいと思います。
◆学校で発生する事故
年間を通して学校事故が全く起きない学校(園)は無いと思います。
例を挙げますと、
・児童生徒等のけがや交通事故等 ・児童生徒等間のトラブル(けんか、いじめ等)
・教職員による不祥事(体罰、犯罪行為等) ・施設・設備の不備による事故 等がありますが、様々な学校事故が起こります。
事故が起きてしまうと、「児童生徒等には普段から注意していました」「研修を行い、教職員事故防止に努めていました」「毎日欠かさず、点検を行っていました」と言っても、言い訳をしているとしか映りません。
そこで、下図のリスクマネジメントの全体像をしっかりと理解することが大切になります。
◆リスクマネジメントの全体像の捉え方
リスクマネジメントの全体像は、左から右へ時間が流れていると考えていただければと思います。
ハザードとは危険な環境や要因のことですが、いじめを例に挙げますと、
「物を隠されたり壊される」「班決めの時に余ってしまう」「元気がない」「相談を受けたことがある」など、いじめに繋がりそうな事案です。
ぺリルは危機発生ですが、いじめ・けがなどが発生して保護者会・マスコミ・警察沙汰等になり大騒ぎになることがあります。
危機の発生頻度を下げるためには、狭義のリスクマネジメント、未然防止策が必要になります。
ハザードは至る所にありますが、危機に繋がる頻度を低くすることはできます。
例えば、1年に5回発生していたものを1回か2回にする、マニュアルを作成(修正)する、研修を行うなどです。
ここで注意していただきたいのが、発生頻度をコントロールできる危機とコントロールできない危機があることです。
震災などはコントロールできない危機になります。
クライシスマネジメントはダメージコントロールとも言われます。
例えば、いじめを受けていた児童生徒等が不登校になったり、自ら命を絶つなどの危機が起きた時の影響度を軽くすることです。
仲の良い友だちが自殺した場合は、連鎖などの二次被害防止が必要になります。
起きた後のダメージの拡がりを軽くすることが大切です。
最終的に、損失を最小限に抑えるようにします。
広義のリスクマネジメントをこのように捉えると良いかと思います。
◆損失の可能性を低くするためには
事故が全く起きないことが望ましいのですが、そのことを目指してしまうと過保護になったり、児童生徒等の成長に制限をかけることが起こり得ます。
運動会(体育祭)の徒競走では、転んでけがをするなど、リスクが比較的小さな事故については、特に対策をせずに様子を見ることもできますが、重大な事故に繋がる大きなリスクについては、発生頻度と影響度を抑える対策が必要になります。
図に記載がある「損失」の可能性を低くするためには、以下のことを行うと良いと思います。
①:教職員のリスクセンス(※)を高める
☆情報量を増やす(教育界の事件事故の分析)
☆当事者意識を高める(啓発・研修)
☆ハザード(危機の発生に結びつきやすい環境や要因)の洗出し
※リスクセンスとは、危険なことを危険なこととして認識する力
②:学校・教職員のリスクを把握する(学校・学年・学級 ・部など)
☆リスクの洗出し
☆見える化
③:対策(事前・事後)を講じる(優先順位付け)
☆計画・実行・チェック・見直し(PDCA)
どのようなリスクが考えられるのかを洗出し、全教職員が確認しやすいように職員室などの中に掲示したり、改善点があれば改善を図り、いつでも全教職員また、PDCAサイクルは、どの学校(園)でも行っていると思いますが、危機はいつでも、どこでも起こり得るという観点で、より一層、強化しながら行うと良いと思います。
学校現場は課題が山積しており、求められていることが多岐にわたっておりますので、各学校(園)における確認作業は大変だと思いますが、児童生徒等・保護者・教職員が安心して活動に取り組むために、損失を最小限に抑えることを意識していただければと思います。
※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典